梶木君とキスしちゃったんだけども、明日どんな顔して話せばいいんだろう?
いつも通り?
なんて少し悩んでいた私の時間は無駄だったと思う。
次の日に熱も下がって学校に来た梶木君は当然いつも通りで。
私も、梶木君の匂いに夢中でいつも通りという結果に。
きっと、あのキスは梶木君が熱で頭が働いてなかったから起きた事。いわば、事故みたいなものだったのだろう。
あの日、梶木君のお見舞いに行ったのが私で良かった。
だって、事故みたいなものだったら、私以外の人にキスとかしちゃってた可能性だってあるから。
もし、……もし山田君がお見舞いに行ってたら、山田君とキスしちゃってたかも!
梶木君とバカ田君のキス……。
そんなのは、……いやあぁぁぁぁぁあ!!
「お姉ちゃん、煩いよ」
頭を抱えて絶叫する私に向けられる冷たい視線とその言葉。
梶木君と似た発言を繰り出す海だ。
海は、夕飯のカレーをスプーンで混ぜなから目の前にいる私へと目を向けている。
すっかり考え事に耽っていたが、今は家での夕飯の時間という事だ。
というのも、特に何も変わらないまま夏休みに突入してしまった為、最近の私は完全な梶木君不足になっている。
そのせいか、梶木君の事を考える時間がとてつもなく多いんだ。
溜め息を一回吐くと海へと視線を向け口を開く。
「すまんねぇ、海」
「なんか最近お姉ちゃん、独り言多いよ」
「自分でも気付いてるよ」
梶木君の事を考えてる間、ひたすらに叫んでいるって。
それもこれも、梶木君不足のせい。