ラブソングは舞台の上で





この週の水曜日。

待ち合わせ場所はこの地域ではメジャーなショッピング施設で、時間は夜の7時を過ぎたくらいという微妙な設定だった。

6時に仕事を終えてからゆっくり準備をして待ち合わせ場所へ行くと、7時前にもかかわらず、晴海は既に指定の場所で私を待っていた。

やっぱり見た目だけはタイプなんだよなぁ。

そう思いながら、あえて声はかけずに近付いて行く。

無表情で周りを見渡している彼は、私を見つけた途端、安心したようににっこりと微笑んだ。

厳つい真顔がふにゃっと柔らかくなるギャップはスゴい。

「明日香〜!」

大声をあげてぶんぶん腕を振っている。

他に人もいるのに、恥ずかしいからやめてほしい。

私は駆け足で彼のもとへ向かった。

「7時過ぎるんじゃなかったの?」

「コンビニのバイトが7時までだったんだけど、これからデートだって言ったら店長が早く上がらせてくれた」

「……あっそ」

気付けば周囲には同じように7時に待ち合わせたと思われるカップルがたくさんいる。

私と晴海も同じように見えているのだと思ったら、妙に照れくさい。

私は4年翔平と付き合っていたけれど、出掛ける時は車で迎えに来てくれていたから、こんなふうに待ち合わせをすることはほとんどなかった。

「周り、カップルばっかだな。俺たちも手くらい繋いどく?」