「あんた、鼻緒が」

言われて藍は足元に目を落とす。

ぶつかった時に切れたのかしらと思っていると、彼は藍の下駄を優しく脱がせ、「しっかり肩に掴まっていろ」と言うと、腰に結んだ手拭いを素早く裂き、藍の鼻緒を修理した。


「ありがとう」

藍の言葉に彼は無言で微笑んだ。

「ねぇ、貴方はどんな花火を上げるの?」

藍は、再び作業を始めた彼に訊ねる。

「……枝垂れ花火だ。けど今まで誰も見たことがない俺の花火を咲かせてやる!」

「楽しみね。貴方、名前は?」

「弁天屋の龍斗(たつと)。あんたは?」

「藍染めの藍と書いて、藍(あおい)」

「藍、いい名だな」

「ありがとう」

束の間の会話だったが互いに惹かれるものを感じた。