アルンとセシリアの式が終わると同時に、参列者は食事を味わっていく。結婚式ということで、テーブルには絢爛豪華な食事が並ぶ。それはどれも美味しく、参列者は口々に絶賛していった。
その光景を眺めていたウィルは、自身の胃袋が食べ物を入れて欲しいと訴えていることに気付く。
彼はポンポンっと軽く腹を叩くと、ユフィールに視線を向け食事をしていいか尋ねていた。
「えっ!?」
「腹、減ったんだよ」
「そうでしたか」
「兄貴達への挨拶は後で」
まずは、空腹を満たさないといけない。何より食欲は、人間が持つ欲のひとつなのだから。ユフィールは一瞬、アルンとセシリアがいる方向に視線を向けるが、すぐにウィルの方に視線を戻した。
ウィルと姉達を天秤に掛けた場合、ウィルの方向に傾く。これも、好意を抱いている証拠だ。
「ユフィールも食べる?」
「では、それを――」
「これ?」
「はい」
ユフィールが食べたいと指し示したのは、ドライフルーツを使用したケーキだった。メインの料理を飛ばし、最初からデザートを食べようとする彼女に、ウィルは突っ込みを入れていた。
「そんなに、お腹は……」
「本当?」
更に続く、ウィルの突っ込み。その突っ込みにユフィールは何度も頷き、本当に腹が空いていないと訴えていくが、すぐにそれが嘘だということが知られてしまう。そう、腹が鳴ったのだ。
「……ユフィール」
「す、すみません」
「じゃあ、これから食べよう」
「そんなに、食べられません」
腹が減っているのなら、沢山食べないといけない。それがウィルの考え方なのか、皿の上に大量の料理を載せていく。しかしユフィールは、どちらかといえば小食。大量に料理を載せられても、全部食べられるものではない。だが、ウィルは「食べなさい」とばかりに、皿を突き出してくる。