「では、義兄さん?」

「そう、それでいいよ」

「は、はい」

 やはり何処か躊躇いがあるのか、まだオドオドとしている。だが、これは慣れの問題。何度か呼んでいれば、慣れてくる。

 それに、利点も存在する。セシリアと結婚したので、アルンにとってユフィールが義妹になる。

 要は「可愛い義妹」だ。

 流石に、身内となった女の子に圧力を掛けて遊ぶということは行なわないだろう。なんだかんだで、アルンは理性を持っている。それに妻になるセシリアも、更に注意をしていくに違いない。

 その時、大事なことを思い出す。

 アルンとセシリアが結婚する。

 つまり、ウィルとユフィールも義兄妹になる。

 それを聞いたユフィールは、暗い気分になってしまう。互いに身内同士になってしまったら、付き合えないからだ。しかし、ウィルとユフィールは血が繋がっているわけではないので、何ら問題はない。

 そんなウィルの説明に、気を落としていたユフィールの顔に明るさが戻り、可愛らしい笑顔を作った。

「という訳だから、式に集中しよう」

「はい」

「見ていないと、兄貴が煩い」

「そ、そうですね」

 二人は互いに肩を並べ、式の様子を見守る。

 淡々と進む式。

 新郎新婦は、永遠の愛を誓う。

 その後、指輪の交換。

 これにより、二人は正式に夫婦として認められる。

 次の瞬間、温かい拍手が中庭に響き渡った。それと同時に、新郎新婦の頭上に花吹雪を撒き散らす。

「……私も」

「うん?」

 ポツリと呟いたユフィールの声音に、ウィルは疑問の声音を出す。彼女にしてみれば、まさかウィルの耳に届いていたとは思っていなかったのだろう、慌てて誤魔化していく。その姿にウィルはクスっと笑うと、これ以上の質問は可哀想と思ったのか、質問をしないことにした。