ウィルの提案に、ユフィールは無言で頷く。今二人の服装は、私服とメイド服。流石に、この服装で式に参加するわけにはいかない。何せ、二人は新郎新婦の身内に当たるのだから。

 ウィルとユフィールが立ち去ってくれたことに、アルンはホッと胸を撫で下ろす。これでやっと、本当の意味でセシリアと二人っきりになることができたのだから。その為か、アルンの表情が緩む。

「どうしました?」

「静かになった」

「邪魔だったのですか」

「邪魔だ」

「私の妹もですか」

 流石に今の一言は利いたのだろう、アルンは必死に弁解していく。邪魔と言ったのは自分の弟のウィルであって、セシリアの妹のユフィールを邪魔扱いしたわけではない。それを必死に訴えていく。

 するとその必死さが伝わったのか、セシリアがクスクスと笑い出す。そして「信じます」と、言った。

「本当?」

「本当です」

「いつものセシリアじゃない」

「今日くらい、信じて下さい」

「そ、そうだな」

 普段厳しいことを言うセシリアだが、今日は二人にとって大切な日。この日くらいは、仕事時のような態度を取らないという。また厳しい態度がもとで喧嘩に発展してしまったら、折角の日が台無しだ。

 それだけセシリアは、この日を待ちに待っていた。だからこそ、アルンの言葉を受け入れた。

「行く」

「そうですね」

「じゃあ……」

 オドオドとした言葉と同時に、アルンはセシリアの前に手を差し出す。これもまた普段のアルンとは思えない態度だが、今日は特別の日。彼も頑張っているのだろう、セシリアはそれが嬉しかった。

 アルンの差し出した手を握ると、セシリアはこれ以上ないというほどの笑顔をアルンに向ける。自身の花嫁の可愛らしく素敵な笑顔に、アルンは完全にやられてしまう。そして頬を赤らめ照れを隠すように横を向くと、扉を開き式が行なわれる中庭へ連れて行くのだった。