次の日、由佳が家の玄関のドアを開けると、そこには自転車にまたがる薫の姿があった。
「おっす。」
「…おはよ。」
何だか今日は薫に反抗する気も起きず、由佳は当たり前のように薫と登校していた。
薫は自転車を押して、怪我をしている由佳のペースに合わせて歩いてくれていた。
由佳の荷物だって、自分の自転車のかごの中に入れてくれた。
本当にこいつは、意地悪なのか優しいのか、分かんないな――…。
昨夜、電話を繋いだまま眠ってしまったせいか、何だか少し気恥ずかしい感じがした。
「お前、いびきかいてたよ。」
「なっ…!」
「嘘だよ。」
「最低。」
薫は楽しそうに空を見上げて笑った。
きっとこの笑顔、こいつのファンの女子たちが見たら鼻血もんなんだろうな――…。
由佳は心の中で思った。
結局昨日、目が覚めた時には電話は切れていた。
一体いつまで薫が自分と電話を繋いでいたのか、眠っていた由佳には分からなかった。