「わざわざそんなことのために、こんな時間に電話してきたの?」
「うん、そう。」
そう答える薫に、由佳は大きくため息をついた。
そんな用事のためだけに、深夜の2時前に電話してくる非常識な人間がこいつ以外の誰がいるだろうか。
そもそも、そんなことはメールで言えばいいのに。
由佳がそんなことを思っていると、電話の向こうで薫が言った。
「それにどうせお前、眠れなくて困ってるんだろうなって思って。」
当たりだ。
何でこいつはいつも何でもお見通しなんだろう――…。
図星だったので由佳は何も言い返さなかった。
「んじゃあな。」
そう言って電話を切ろうとする薫に、由佳は呼びかけた。
「待って!」
呼び止めてしまってから、由佳は自分がしたことが全く自分らしくないことに気づいて少し後悔した。
だけど今は何となく、一緒に話していてほしかった。