―――…。
由佳は目を覚ました。
何故か分からないが、目からは涙が零れ落ちていた。
とても嫌な夢だった。
それは小さい頃の、思い出したくない記憶。
同じような夢を何度も見る。
その度に、夜中に何度も目を覚ますのだ。
時計を見ると、まだ深夜の2時前だった。
朝まではまだまだ時間がある。
このまま起きているわけにもいかない。
だがこのままもう一度眠りに就ける自信もない。
由佳はなんだか心が空っぽな気持ちになった。
その時、携帯が鳴った。
由佳は驚いてビクっとした。
ディスプレイに表示されていたのは、「小野寺薫」の文字だ。
またこいつだ。
こいつは、何もかもを見透かしたようなタイミングで、いつも由佳のもとに現れる。