――――…。


「ママ!」


そう言って母親の胸に飛び込む少女を、虚ろな目で見つめる1人の少女がいた。

「おかえり、七海。」

「ただいまママ!あのね、今日はリカちゃん先生がね…」

「うんうん。」


少女を見つめる母親の瞳はとても優しく暖かかった。
2人は手を取り合いながら、幸せそうに遠くへ消えていく。

由佳はそんな2人の姿が見えなくなるまで、じっと見つめていた。


「由佳ちゃんのお母さん、遅いわね。」


困ったような顔でそう笑うリカちゃん先生の言葉に、由佳は小さく頷いただけで何も言わなかった。

「もうちょっと、待ってみようか。」


そう言って由佳の頭を撫でるリカちゃん先生の顔を見て、自分が哀れに思われていることを幼いながらになんとなく察した。


待っても待っても礼子は迎えに来なかった。

日は暮れ、あたりは薄暗くなっていた。

いつものことだ。