「…まさか。ただのクラスメートだよ。」

「ふーん。まぁそうだと思ったけど。あんたにこんなイケメン釣り合わないものね。」

「…そうだね。」

「お母さん、仕事行ってくるから。またしばらく帰らないと思うから、じゃあね。」

「…またね。」


礼子はそれだけ言い残すと、ひらひらと手を振り駅の方向に歩いて行った。
由佳は俯くと、松葉杖をついて歩き出した。

それにしても、1か月ぶりに再会した娘との会話がこんな冷めた内容だなんて、まったく酷い母親だな、と由佳は冷ややかに笑った。

娘が足に大怪我を負っていても、心配な顔一つしないのだから。



不思議なことに、あれだけしつこく付いてきた薫はもう由佳の後に付いてこなかった。

きっと由佳と礼子の母娘の関係とは思えない冷めた会話に呆然としたに違いない。



「あほらし。」


由佳は何故か可笑しくなって、笑いが込み上げてきた。


「綺麗事でしょ、優しさなんて――…」


由佳は小さく呟いた。