そんなことを考えながら由佳が自分の靴箱の前にたどり着いたとき、自分の靴箱の中に何か紙のようなものが入っていることに気が付いた。
由佳は嫌な予感がした。
きっと薫と一緒にいるところを見た薫のファンか誰かが嫌がらせの手紙でもよこしたに違いない。
そう思って、由佳は恐る恐る折りたたまれた紙を広げる。
「笠原さんへ」
見覚えのある綺麗な文字がそこにはあった。
「今日、授業に出ていなかったようなので、今日の授業の範囲のノートをコピーしておきました。」
そう書かれた小さな紙と一緒に、今日の授業の範囲であろうノートが全て入れられている。
この文字は間違いなく、由佳が骨折して休んでいた間にも毎日届いたノートの文字と同じだ。
綺麗で丁寧な、女の子のような文字だ。
「一体、誰なんだろう…。」
由佳は呟いた。
由佳に好意でこんなことをしてくれる人など、居ないはずだ。
由佳の脳裏にふっと薫の顔が浮かび上がったが、「まさかな。」と呟いて由佳は笑った。