由佳は廊下を1人で歩いた。

人はほとんど居ない。
たまに教室に残って雑談している女子たちの声、そして野球部がグラウンドで練習をする声が聞こえてくる。


「ねぇねぇ、聞いた?小野寺くんのこと!」


由佳が松葉杖をついて廊下を歩いていると、どこかの教室から女子たちがそう話している声が聞こえてくる。


「聞いた聞いた!あの謎の地味女でしょー?遠藤さんと別れて、そっちと付き合い始めたのかな?」
「ないない!だって本当に地味だったよあの子。しかもいじめられてるらしいし。」
「小野寺くん、案外正義感強くて見てらんなかったんじゃない?」
「そうだとしたら、小野寺くんの株、更に急上昇だよね~!」


女子たちの会話を聞きながら、由佳は鼻で笑った。


結局あいつは何をしても株が上がって、私の株だけが下がり続けるんですね――…。


由佳は心の中で薫に嫌味を言いながら、玄関に向かってひたすら歩いた。



あーあ、また授業サボっちゃったなぁ――。

あいつに出会ってから、授業サボりまくりだし――…。

今日の授業の範囲、屈辱だけど小野寺薫に教えてもらおう――…。