――…。

由佳は薫に背負われながら、山道を歩いていた。

先程までの雷雨がまるで嘘のように、雲の隙間からは太陽の光が漏れている。
その太陽の光に、木々の葉っぱの上に落ちた雨露が照らされ、きらきらと美しく輝いていた。


「なんかごめん。重くて。」


由佳が謝ると、薫は笑いながら言う。

「お前の口から謝罪の言葉が聞けるとはな。」


由佳と薫はゆっくりと山道を進んだ。
ちゃんと道が合っているのか不安になって由佳が薫に尋ねると、薫は「太陽を見ればわかるよ。」と涼しげに言った。


いつの間にか空は青から薄いオレンジ色に色を変えていた。


「もうすぐだな。ちょっとここで休憩しよう。」


薫はそう言うと、座れそうな大きな岩の上に由佳をおろし、その隣に自分も座った。


そこからは山の下に広がる町が一望できた。
大分と頂上に近い位置なのだろう、と由佳は思った。


真っ赤な夕日が、町一面をオレンジ色に染めている。