「…お前、熱はどうだ。」

薫の質問に、由佳は首を傾げた。

「熱…?」

「俺が助けた時、お前ひどい熱だった。お前が登山前から体調悪そうにしてたのは知ってたから心配してたらこのざまだよ。」


あぁ、あの時の眩暈は暑さのせいではなく、熱があったからなのか、と由佳は納得した。
そしてそれと同時に、由佳の中に1つの疑問が生まれる。


「あんたが私を助ける?何のために?」


由佳が眉をひそめながら尋ねると、薫は呆れたようにはぁーと深くため息をついて言った。


「だからお前は色々と勘違いをしてるって言っただろ。」

「何が?」

「確かに俺はお前を傷付けるような態度や発言を今までしてきた。それは謝る。悪かった。」

「………。」

「でも、これだけは言う。俺が”ケイ”としてお前に近付いたのは、お前を陥れるためでも何でもない。俺はお前に害を与えるつもりはない、って言ったはずだろ。」

「……なにそれ。そんなこと言われて、私が信じると思う?今まであんたは私にひどいことしてきた人の1人じゃない。それにあんたは私に1番ひどいことをしてる遠藤奈津子の彼氏でしょ?」

由佳が怒ったようにそう言うと、薫は答えた。


「まず、お前は大きな勘違いをしてる。奈津子は俺の彼女でも何でもない。噂は1人歩きしてるけど、俺はまるでそういう気はない。」

そして薫は続ける。