由佳は大きな雷鳴で目を覚ました。
そこは薄暗い山小屋のような場所だった。
由佳の身体の上には、上着のようなものが掛けられている。
「目、覚めたか。」
由佳の顔を覗き込んでそう言ったのは、綺麗な顔をした男、小野寺薫。
何故か由佳は今山小屋の中にこの男と2人きりで居るらしい。
外からは雨が激しく地面を叩く音が聞こえてくる。
「とりあえず、昔使われてた山小屋みたいなのを見つけたから。雨が止むまでここにいるしかねぇな。」
由佳は暫く状況が読めないまま、その場に寝そべっていた。
そして先程起こった様々な出来事が徐々に由佳の記憶の扉を開き、そしてはっきりとしたものに変わったとき、由佳はその場から飛び起きようとした。
だがそれも、右足に走った激痛によって阻止されてしまう。
「…った!」
「お前、当たり前だろ!馬鹿なことすんな!お前の右足、その様子じゃ多分折れてる。」
薫にそう言われて、由佳は自分の右足を見た。
なるほど、由佳は薫が言っていることをすぐに理解した。
何故なら由佳の右足はいつもの倍ほどに腫れ上がり、そして虹色のような鮮やかな色をしていたからだ。
「携帯も通じねぇし、この雨じゃまともに前も見えねぇ。」
薫は困ったようにそう言った。