由佳は朦朧とする意識の中、抵抗しようとしたが、足を怪我してしまっていたので、抵抗することも出来なかった。
「こんなとこまで…いじめに来たの…」
「はぁ?お前、何言ってんだ。頭でも打っておかしくなったか?この期に及んで俺がお前をいじめるわけねぇだろ。」
薫は怒ったようにそう言う。
「え…違うの……」
「お前は馬鹿か?とりあえずこのままだとお前の身体が危ない。雨をしのげる場所を探さないと…。」
薫はそう言って、由佳を抱きかかえたまま歩き出した。
薫の腕は意外にも筋肉がついていて、胸の中は温かかった。
華奢だと思っていたけど、案外しっかりしてるものなんだな、と由佳はそう思った。
何だか居心地が良くて、由佳はそっと目を閉じた。