由佳はそのまま1人で歩いた。
時計を忘れてきたので、どのぐらいの時間歩いていたのかも分からないが、おおよそ1時間近く歩いただろうか。
由佳は少しゆっくりしたペースで歩いていたが、華代が後から追いついて来る気配は無かった。
それどころか、他の班の生徒の気配すら見られない。
「あれー?あの子、まっすぐ歩けばいいって言ってたよなぁ。」
由佳はそう呟いて、不思議に思いながらも足を進める。
道はどんどんと険しくなり、最初に歩いていた舗装された山道とは全くかけ離れたものになっていた。
由佳は生い茂る草木をかき分けて、前に進む。
案外険しいコースなんだな――…。
そう思いながら、由佳は少し休憩できそうな場所を見つけると、座り込んだ。
少し眩暈がする。
暑さのせいだろうか。
いくら山の中とは言え、何時間も歩きっぱなしでいると、さすがに身体に堪えるようだ。
由佳が休んでいると、突然空の色がどんよりとした灰色になった。
そして太陽は瞬く間に雲の中に隠れ、そして遠くで唸るような雷鳴が聞こえた。
「やばい、通り雨だ。」
山の上は、突然の通り雨に遭いやすい。