登山は班ごとに決められたコースを進む、という決まりだった。
だが、いつの間にか由佳たちの班は薫・奈津子・桐島の3人と、由佳・華代の2人に分かれていた。
由佳にとってはそれはそれはとても有難かったが。
「私、笠原さんとずっと仲良くなりたいって思ってて…。だからとっても嬉しいです!」
華代はそう言ってにっこりと笑う。
「え…どうして?」
「笠原さんって、とても強いと思います!1人でも負けない強さを持っているっていうか…」
「いや、別に…ただ面倒くさがりなだけだよ。」
「ううん。とても素敵です。私にはそんな強さは無いから…。」
華代はそう言って、どこか悲しげな顔をした。
「…そっか、ありがとう。」
由佳は何と言って良いのか分からず、ぎこちなくそう答えた。
いつの間にか薫たち3人はずんずんと先に進んで行き、姿が見えなくなっていた。
由佳は華代と2人でゆっくりとゆるやかな山道を歩いていた。
登山といえども、大したものではない。
きちんと歩きやすく舗装された道を歩くので、体力こそは使うがそれほど苦痛なものではなかった。
しかしいくら涼しい地域の山とはいえども、7月の日差しは意外にきつい。
由佳の額からはたらたらと汗が流れていた。