顔だけは見たことがあったが、あまり他人に関心がない由佳は、初めて名前を知った。
由佳に自分から話しかけてくる女の子は、初めてかもしれない。
何せ由佳はいじめられている身だ。
そんな由佳に気安く話しかけてくるということは、奈津子たちを敵に回すことになりかねない。
だが目の前の大人しそうな女の子は、そのいじめている張本人の前で堂々と由佳に話しかけてきた。
少し彼女の今後が心配になりながらも、由佳は内心、まだこの子が居てくれて良かった、と思った。
「あ、うん…。よろしく。」
少しぎこちなく返事をすると、華代はにこっと笑った。
なんて性格が良い子なんだ…。この学校にもまともな人間が居たとは――…。
そんなことを考えていると、ふと視線を感じ、顔を上げると、薫と目が合う。
だが薫はすぐに目をそらし、桐島の話をだるそうに聞いてあげていた。
「あの…、私、あの3人ってちょっと怖くて苦手で…。」
華代はそう言って、少し離れた所で話す奈津子と薫と桐島を見た。
まさに、その考えまでは私と一緒だとは――…。
由佳は心の中で少し感激しながら、華代の話に耳を傾けた。
「だから、笠原さんが班のメンバーに居て、少し安心しました!」
「うん、私も。」
由佳がそう言うと、華代は嬉しそうに顔を明るくさせた。
「一緒に行動しましょうね!」