昼休みを告げるチャイムが鳴ると、由佳は非常階段に向かった。
昼休みはこの場所で過ごすのが、毎日の習慣になりつつあった。
そして非常階段のドアの前まで来ると、周りに誰もいないことを確認してドアを開けると、いつもの特等席である踊り場に腰を下ろした。
由佳は大きなため息を吐いた。
やっとゆっくりとした時間を過ごすことが出来る。
そして由佳が鞄から弁当を取り出そうとした時だった。
非常階段のドアが突然音を立てて開いた。
由佳は驚いて、弁当を取り出そうとしていた手を思わず止めた。
そして開いたドアのほうに目をやった。
非常階段に入って来た人物を見て、由佳は更に驚くことになる。
「小野寺薫…。」
そこには薫の姿があった。
由佳は咄嗟に鞄を両手に抱えて立ち上がり、警戒する体勢を取った。
目の前にいる男は、それはそれはとても綺麗な顔立ちをしていて、まるで少女漫画から出てきた王子様のようだった。
これは女子が黙っていないのも頷ける。