次の日、由佳は何事もなかったかのように登校した。
由佳が教室に入ると、真っ先に奈津子が由佳の存在に気付いて聞こえるように言う。
「あーあ、昨日は誰かさんが居ないおかげで快適な1日だったのに。ずっと休んどけよ。」
由佳が聞こえないふりをして自分の席に向かおうとすると、桐島と薫の姿が目に入った。
由佳の姿を見つけていつも通り囃し立てる桐島を横目に、由佳と薫の目が一瞬ばっちりと合う。
だが由佳は何か言いたげな薫の隣を、無表情で通り過ぎた。
これでこそ本来の自分だ、と由佳は思った。
一体今まで何を血迷っていたのだろう。
自分としたことが、とんだ大失敗だった。
礼子のあの一言がなければ、由佳は気付かずまた同じ失敗を繰り返したのだろうか。
――― 珍しく人間みたいな顔してるから。
礼子の言葉が、由佳の頭の中で何度も反響する。
そしてその度由佳は、愚かな自分を嘲笑った。