「離して!この裏切り者!」


由佳はそう言って葵の手を振りほどこうとしたが、由佳の腕はがっちりと掴まれていて振りほどくことが出来なかった。

いくら体が小さい葵と言えど、相手は男だ。
女の力では敵わない。


「人間は裏切る生き物だろ?」


意地悪そうにそう言って細く笑む葵を、由佳は睨み付ける。


「一体何のつもり?」

「後々分かるよ。」

「離して!誰か!」

「叫んでも無駄だよ。俺が何のために人が居ないうちに学校を出てきたと思ってんのさ。」

「…っ!」

「ごめんだけど、暫く大人しくしてもらおうか。」


葵はそう言うと、由佳をぐっと引き寄せ、由佳の口をハンカチのようなもので塞いだ。

苦しい、と思った次の瞬間には、由佳の意識は朦朧とし、由佳の意識はそこで途絶えた。