人通りのほとんど無い道路に来たとき、葵は突然立ち止まった。


「……?どうしたの?」


由佳が不思議そうに尋ねると、葵は俯きながらニヤリと口角を上げた。


「笠原さんって結構チョロいね。」

「…?」

「バカバカしいだなんて言っておいて、すぐに人を信用するなんて。」


そう言って由佳のほうを見た葵の表情は、先程の無邪気な表情とは一変し、意地悪く微笑んでいた。


「どういうこと…?」

「俺が君を裏切るかもしれないって、君は考えなかったの?」

「…!」


由佳は目を見開いた。
やられた、そう思った時にはもう既に遅かった。


「全く、あのお方の言う通り、君は危ういな。」


葵はそう言って、由佳の手を思い切り掴んだ。