「待って!何もそんな急がなくても…」
学校を出て暫く歩いたところで、由佳は息を切らしながら目の前を歩く葵に言った。
すると葵は足を止めてくるっとこっちを向いた。
「あぁ、ごめんね。」
葵は申し訳なさそうにそう言って続ける。
「だけど笠原さん、あんまりうちの学校の生徒に見られたくないでしょ?だから皆が居ないうちに行ったほうが気持ち的に楽かなって思って。」
「え…?そのために…?」
えへへ、と無邪気に笑う葵に、由佳は目を丸くした。
それは葵の気遣いだった。
葵も学校内では目立つほうだし、葵のことが好きな女子も何人か居るだろう。
確かに他の生徒に見られるのはあまり好ましくない。
周りを見渡せば、武城高校の生徒はまだ見当たらない。
「ありがとう…。」
由佳は小さく呟いた。