由佳は後ろを振り返った。

幸いにも、恭平が後を追いかけてくることはなく、ホッと一息をついた。


しかし空き教室から出て少しした所の廊下で、由佳の目の前にまた別の人物が立ちはだかる。


「ちょっと、あんた。」


1人になりたいのに、どうしてこうも邪魔が入るのだろう。


「薫からやっと離れたと思ったら、次は恭平先輩?厚かましいにも程がある。」


遠藤奈津子はそう言って、由佳を睨み付ける。


最近めっきり大人しくしていたと思っていたのに、このタイミングで由佳に喧嘩を売ってくるなんて全くついていない、と由佳は思った。



「違うよ。そもそも小野寺薫とも何もないし。」


由佳が呆れたようにそう言うと、奈津子は続ける。


「言っとくけど、恭平先輩には近寄らないほうがいいわよ。」

「……。」

「噂に聞いたことあるかもしれないけど、あの人、結構ヤバい人だから。」


奈津子は不敵な笑みを浮かべながらそう言った。


「わざわざご忠告どうも。だけど心配しなくても関わる気ないから。」


由佳がため息をつきながらそう言うと、奈津子は顔を歪ませた。


「そんなこと言ってられるのも今のうちだから!あんたなんか痛い目に遭って死んじゃえばいいのよ!」


由佳はそんな奈津子の罵声を無視して奈津子の横を通り過ぎた。