由佳は非常階段に向かおうと思ったが、薫とよく過ごしていたあの場所に行くのも何となく気が引けたので、誰もいない空き教室に入った。


自分は何を血迷っていたのだろう、と由佳は思った。

そもそも、友情や絆なんていうものは、自分が最も毛嫌いしていたものだ。
そんな綺麗事などいずれは消え去ってしまうのに、どうしてそんなものに心を一喜一憂させていたのだろう。


由佳は1人で生きていくと決めたのだ。

全てに見捨てられ裏切られたあの時、そう心に誓ったじゃないか。


「そう、それでいいんだ由佳。」


目の前から聞こえてきた声に、由佳は顔を上げた。


「……何の用。」


由佳は威嚇するように恭平を睨み付けた。