つい数時間前に、自分のことを守ると言ってくれた華代のあの泣き顔を、大好きだと言ってくれたあの笑顔を、由佳はいとも簡単に裏切ってしまった。
薫だって、そんな由佳の姿に幻滅したに違いない。


由佳は2人を裏切ったのだ。


「そうだ、裏切ったんだ――…」


由佳はハッと目を見開いた。


自分の愚かさに、涙がこぼれた。


由佳は、人間という裏切りの生き物を軽蔑し、恨んできたつもりだった。


だけどその裏切りを、自分自身もしてしまったことに気付いた。


「最低だ…最低だ…っ」


涙は止めどなくこぼれた。

初めて、自分自身を殺したいと思った。