由佳はリビングのソファに座り込んで膝を抱えた。
唇には微かに恭平の唇の感触が残っている。
初めての、キス。
強引な態度とは裏腹な、優しいキスだった。
「どうして今更…」
由佳の目に涙が滲んだ。
恭平の考えていることが全く理解できなかった。
もう二度と由佳の前には現れないと思っていたのに。
昔の由佳からしたら、恭平とキスするなんて夢のようだったかもしれない。
だけど今の由佳の頭には、それよりも華代と薫のあの呆然とした表情がこびりついて離れなかった。
『ごめんね、華代。』
そうメールを送信したが、いつまで待っても返事は返ってこなかった。