恭平の唇がゆっくり離れた。
「ちょっと!何する…」
由佳が言い終わらないうちに、恭平がまた由佳を抱き締める。
そして由佳の耳元で、静かに言った。
「ごめんね、由佳。面倒なことになっちゃったみたい。」
「え?」
恭平は由佳を離した。
由佳はすぐに恭平の言葉の意味を理解した。
由佳が右を向くと、さっき姿が見えなくなったはずの華代が、目を丸くして立っていた。
「反対側も、見てみなよ。」
恭平に言われるがまま由佳が左を向くと、そこには息を切らして恭平を睨む薫の姿があった。
最悪だ―――…。
由佳は思った。