「今更話すことなんて、何もない。」
由佳が冷たくそう言うと、恭平はふっと鼻で笑った。
「由佳、変わっちゃったね。」
「それはお互い様でしょ?」
「どうかな?」
恭平は由佳の目の前まで来ると、立ち止まった。
見上げるほど高くなった身長。
組まれた両腕は、かつての頼りない細い腕とは違い、筋肉質な男の人の腕になっていた。
「由佳、仲良くしようよ。」
「突き放したのはどっち?身勝手にも程がある。」
「由佳ってさ、昔から危うかったよね。」
「何の話?」
その瞬間、由佳の視界が真っ暗になった。
温かいものが、由佳を包んだ。
懐かしい香りがした。