家に着いて、私はリノを先に庭に行かせて、男の子に頭を下げた。
「送ってくださって、ありがとうございました」
「良いけど・・・ここ、あんたのうち?」
「?はい」
驚いた顔の男の子に首をかしげると、彼は複雑な顔をして、うなじを掻いた。
「?」
「や、なんでもない・・・じゃあな」
男の子は、さっさと足早にもと来た道を戻っていく。
「あ・・・!」
思わず呼び止めそうになって、私は慌てて口をつぐんだ。
「今度は何だよ」
振り向く男の子。
名前を・・・聞いても、良いかなぁ?
「あの・・・」
「ん?」
男の子が体をこちらに向ける。
「名前・・・教えてください」
「・・・」
あれ?
男の子が少し、寂しそうな顔をする。
「・・・アレン」
「あれん、さん」
男の子はふわりと笑って片手を上げた。
「じゃあな、瞳」
アレンはそのまま、月明かりの道を歩いていった。