アタシはそこに広がる風景を見て、自分の目を疑った。
ほのかな期待は、アタシの胸の中で音も立てずに崩れ去った。
どういうことか、わからない…
 アタシの目に飛び込んで来たのは、何もない、ただガランとした小さな部屋。
この間まで散らかっていた部屋がこんなにキレイになってしまっている…
カズくん愛用の扇風機がない。
カズくんが使っていたイスもない。
ただ、部屋の真ん中に小さな絵が置かれているだけ。
アタシは慌てて部屋に飛び込み、カズくんの扇風機やイスを捜した。
どこに行っちゃったの…?
アタシが休んでいる間に何があったの…?
部屋の隅に置かれている作品の山の中にはカズくんの絵はなく、アタシの絵ばかり…
あの大きな合作さえ、見当たらない…
アタシは絶望した。
カズくんはもうアタシに愛想を尽かしてしまったんだと思ったから。
 そして、ぼんやりとしているアタシの目にあるものが入って来た。
それは、部屋の真ん中にポツン…と置かれている一つの小さな絵。
アタシはとぼとぼとその絵に近付いて、そのまま座り込んだ。
その絵を抱きかかえてじっくりと眺めると、カズくんのサインを見つけた。
これはカズくんがアタシに残してくれた絵なのかな…