「このままじゃ風邪引いてしまうね。うーん…明日の朝から帰れば大丈夫か」
「え?」
「行こうか、美遥」
そう言って悠ちゃんは車であるところに向かった。
…と言っても、わずか五分で着いた。
「ここって…」
先に車から降りて、私は懐かしい二階建ての家の前に立つ。
そして周りを見渡しても六年前とあまり変わっていなかった。
「…本当は帰ってくる気なかったんだけどな」
そう。ここは悠ちゃんの実家。
車庫に停めた悠ちゃんは私に近づき、くしゃと自分の髪を乱す。
「でもまぁ…緊急事態だし」
「あまり家に帰ってないの?」
「いや…正月は帰って来るよ。ちょっと日はズレるけど。…何と言うか…、一度家に帰ったら、なかなか母さんが離してくれないんだよ。彼女はー?とかドラマみたよーとか」
ああー…うん、そうか。
私が覚えている限り、悠ちゃんのお母さん…真理子さんは明るいというかお転婆というか…
とりあえず元気な人だ。
でも私はそんな真理子さんが好きだった。