「兄さん…?人を殺したの…?」

亜鬼は、兄と距離を置く為に
少しずつ後ろへ下がった。

「亜鬼は殺さないよ。だから
俺と一緒に帝国軍の拠点まで行こうか」

兄の冷たい声に亜鬼はゾクっと震え、
逃げ出そうと森へ向かった。

それを兄はゆっくり指を銃の様な形にして地面に向けて打った。

「Spell(スペル)!?」

「流石に亜鬼でも知ってるんだね。
やっぱ現代っ子って凄いねー。
でもね亜鬼。
一つ訂正があるんだけど、
さっきから兄さん兄さんって誰の事?」

「えっ…?」

「俺はね。仕事でここに来てるだけの
帝国軍兼秘密警察組織のセツナ少佐だからあんまり兄さんなんて馴れ馴れしく呼んじゃダメだよ。」

亜鬼が後ろへ下がるに連れて、
セツナは前へ進む。
やがてバランスを崩し、
尻餅をついた亜鬼を見て指を鳴らした。
その合図と共に地面から出てきたSpellが
亜鬼の首周りを囲んだ。

「動くと…死ぬよ?」

セツナが亜鬼に忠告すると、
亜鬼は俯いて、涙を堪えた。

「なんで…こんな…事に…Spellを…」

「全ては、あのお方の意のままに。」

Spell(スペル)は軍や警察そして、
教会側の人間が主に使う特殊能力。
感情言体・思考感情体・思考言体、
言体感情体と組み合わせて使う。
感情を文字にして具現化する感情言体。
思った事や考えた事を感情で
具現化する思考感情体と
文字にして具現化する思考言体。
文字や言葉を感情で動かす言体感情体。
どれも使う者次第で大きく変わるが、
主に攻撃型・治療型の
二つに分かれている。
帝国軍や警察は、攻撃型のSpellを
人を殺める為の凶器として使う事が多い。