辺り一面真っ暗な中、
「父さん！！」と
追っても追っても届かない父の背中を
必死に追いかける亜鬼。
名前を呼んでいるのに返事どころか
振り向きもしない
父親をただひたすら追いかける。

「父さん！！俺だよ！亜鬼だよ！」

父親はある扉の前に来るとやっと
立ち止まり亜鬼の方を振り向いた。

『亜鬼…。
ここからはついてきてはいけない…。
お前にはまだ早すぎる。
ここで引き返すんだ。』

亜鬼は涙目で
扉の奥に消えていく父親に
「父さん！！俺…聞きたい事が…
教えて欲しい事がまだたくさんあるんだ！
だから…っ！一緒に帰ろうよ！！」と
手を伸ばした。だが、
伸ばした手も虚しく父親は暗闇に消えた。

「父さん…兄さんもいなくて…
俺…一人で…これからどうしたら…」

亜鬼が蹲って泣いていると
どこからかよく聞いた事のある
声が聞こえた。

《兄さんが憎い…。
里を裏切った兄さんが…！
ねぇ亜鬼…殺そう？
父さんを殺した奴らを俺と殺そうよ！！》

「君は…」

《君の闇で出来た感情と
君が一人になりたくないって
強く思った心から具現化された…
様はSpellで作り出された
もう一人の君だよ。》