「よし着いたぞ。
うーん疲れちゃった。」

亜鬼は森に入ってから出るまで
「父さん」しか呟かなかった。
目に光はなく、
自我を失っているようだった。
セツナは亜鬼の枷を引っ張り、
シラヌイのゼロットに乗った。

「シラヌイ様ー。
鬼の神器とその器を連れてきましたよ。」

誰もいない船内は亜鬼とセツナが居ようともただならぬ静けさを出していた。


「なにかあったのかな…。」

セツナがそう呟くと、
間も無く、シラヌイが戻ってきた。
シラヌイはセツナと亜鬼を見ると
椅子に座った。

「ご苦労だったな。セツナ。」

「いえ、そんな苦労はしてませんよ。」

「お前が鬼の神器の器か?」

「…。」

シラヌイはセツナが亜鬼の首に掛けた
Spellを解くと、
亜鬼の枷を自分の方へ引っ張った。

「…。」

「質問している。
お前には口と言う物がないのか。」

「…。」

「なぜ黙っている。
先ほどの威勢はどうした?破妖よ。」

シラヌイは、なにも語らない亜鬼が
抵抗出来ない様にしようと
Spellで文字を書いた。
だが打とうとしたその一瞬の間に、
亜鬼が視界から消えた。