初夏の生暖かい風が私たちの間を通り抜ける。

彼は、無表情だった。

冷たさも温もりもない、何を告げるかわからない。

少しの沈黙の後、彼が口を開いた。


「泣いてないよ?」

「え?」

「泣いてないよって言ってんの。」

「嘘です。泣いてました。」

「…やだなぁ、いつ見たの?」


先輩は髪をかきあげ、苦笑いを浮かべた。


「…昨日です」

「…そっか」

「…辛いですか?」


私は今、人の心をえぐっている。

でも、罪悪感はない。


「何、慰めてくれんの?」

「はい。慰めてあげます」