「せんぱ…」

「蕾…」

「…?」


蕾?彼は確かにそう呟いた。

呟いたというより、桜に話し掛けるように。

私はその場から離れることができなかった。

彼は優しい笑みを浮かべていた。

私が見とれていると、彼と目があった。


「…蕾?」

「え?」


彼は驚いていた。

蕾、誰かの名前?


「…あ、桜葉…」

「す、すいません…」

「いや、こちらこそ。ごめんね」


彼は青い目を細め、微笑んだ。

何が、彼を悲しませているのか。

私が足を踏み入れて良いのか。