「…え?」

「それだけ?」


嫌いじゃないよ?

じゃあ何で?

私は涙を堪えることなく、流していた。


「何で、何で、避けるの…」

「…」

「好きな人の顔が見れないって、辛いんだよ…っ」

「…そうだよね」


彼は青く茂った桜の気を見て、小さく笑った。


「あ…」


葵も、好きな人の顔が見れない。

私よりも、見ることが出来ない。

…もう、止めよう。

私は葵の記憶を抉ってるだけだ。


「…ごめんね、今までありがとう」

「…」

「最後に」


私は葵に近付いた。

胸が痛い。

君を見るたび、また好きになる。