桜の木の下。
こんなに暑い日でも、涼しい顔をして彼は立っていた。
それを見ただけで私は泣いてしまいそうだった。
私はすぐに彼に話しかけた。
「…あ…、葵!」
「…」
無言で私を見る葵。その表情には何も浮かんでいなかった。
彼は口を開かなかった。
「会いに来て、ごめんなさい。今日が最後だから。」
「…」
彼は睨んでいるようにも思えた。
あの、花が咲いたみたいな。あの笑顔が見たかったな…。
何で?私はここまで避けられてしまったんだろう。
何で、自分でわからないんだろう。
何もしてないのに誰かを嫌いになる人じゃないから。
涙を堪えて、私は続けた。
「…私、葵が大好きだから、葵に嫌われたくないよ」
「…」
「もう、両思いとか、そんなの望まないから、嫌いにならないで…」
「嫌いじゃないよ」