「もしかしてじゃないよ。 レイ…レイリア」
「っ、何であたしの名前を知ってるの? あたしは知らないのに」
「それは……」
男の両手が頬を包む。
顔が近づいてきて、反射的に目を閉じ、コツンと額と額が合わさった。
「……記憶を取ってしまったから」
瞬間、ザァッと強い風があたしと男を包み込む。
同時に何かがあたしの中に流れ込んできた。
ピタリと風が止み、ゆっくりと目を開いた。
「……思い出した」
忘れてはいけなかった相手を。
男はニコッと笑い、背を向けて歩き出す。
何も言わずにいなくなる気?
「いつでも来てもいいよ! "ノルン"ッ! 友達としてね!」
その背に向けて叫ぶと男、ノルンは片手を上げる。
一瞬のまばたきをした時、既に姿はなくなっていた。