それだけではない。


もう一つの依頼書と男が概等しているから。


〈食い逃げ犯を捕らえて欲しい〉


だって、あいつは金を持ってないでしょ。


あんだけ注文するんだから相当な額でしょ。


ふと男の足下に視線を向ける。


男の影がユラリと動き出した。


「!?」


ユラユラと動いたかと思うと何かが出てくる。


"手"だった。


周りには見えていないのだろうか。


男の食いっぷりに目を離せないでいる。


……まさか、ここでも対面するとは、ね。


あたしは魔法書片手に男に近づこうと立ち上がった。


が、


「お客さん、いい加減に料金払ってください!」


カウンター側から店長らしき人が紙を突き出した。


「……っ、あのですねっいくらお客様だろうとお金を払わずに店をでるのは犯罪ですよ!」


店長を巻き込むワケには行かないから、あたしは立ったまま事の成り行きを見守る。