3階にある私の教室。
一番窓側の後ろから二番目が特等席。
広々としたグラウンドを見渡せる
私の大好きな場所。
沈む夕陽をバックに練習しているのは
サッカー部。
好きな人はすぐに見つけられるみたい。
ただ一人を目で追ってしまう。

池内悠弥先輩。

なんで悠弥先輩なのかは分からない。
面識なんてさらさらないし
もちろん、話したことだってない。
けど、私には悠弥先輩だけだったんだ。
気付いたら目で追っちゃってる。

「部活動以外の生徒のみなさんは
下校の時刻となりました。
すみやかに下校してください」

校内に放送委員の声が響く。
もう、こんな時間。
時計を見ると午後5時を過ぎていた。
帰らなきゃ。

ートントントン

薄暗くなった階段を下りていく。
静まり返った廊下には
私の足跡だけが響き渡る。
玄関へ行くと誰かが座り込んでいた。
顔は下を向いているから見えないけど
たぶんサッカー部。
見覚えのある練習着を着ていた。

そのとき。
私の足跡に気がついたのか
下を向いていた顔が上がった。

ーあ、悠弥先輩

私がさっきまで見つめていた人。
私が好きな人。

「・・・・・・・」

お互いが無言のまま時が過ぎる。
耐え切れなくなり回れ右をする私。

「・・・ねぇ」

どきん。
私に、言ってるのかな。
掌をぎゅっと握りしめた。
高鳴る鼓動。
振り返ることも、出来ないくらい。
だからと言って逃げ出せず。
その場に立っていた。