もう、なんだっていい。早く電話を切りたい。私はそんな一心で自分の言葉を止められないでいた。

これ以上、思い出したくなかったからだ。あの、苦い思い出を。


「もう、いいでしょ。これ以上アンタの声、聞きたくない」

「そっちがお前の本性ってわけ！」

「だったら何！？アンタには関係ないしっ！」




少しの沈黙のあと、何かを察したようにレンの調子の良さそうな声が真剣な声に変わった。


「あの詞作ったの、お前なんだな」


その言葉に私は動揺した。

別に隠す必要もない、筈、なのに私はなぜかそのことを知られるのが、怖かった。

なぜかはわからない。ただ、嫌な予感がしたのは間違いではない気がした。


「し、知らないよ。もう発売日も決まったようだし、今更そんなこと聞いてどーすんの？じゃ、もう二度と電話してこないでくださいねっ！」


言い切って、電話を切った。

無理にでも切らないとまだまだ続きそうだったからだ。


携帯を閉じ、それをユイに渡した。

そしてユイの背中を押し部屋から追い出そうとした。