その日、まるで抱きかかえられるように。 押し倒おされるように。 部屋に帰るなり、陸は私を抱いた。 その癖、切なくなるほど優しいキス。 長く、深い唇の重なり。 今までにないくらい、優しい口づけだった。 ゆっくりと進む時の流れの中、陸は何度も耳元で囁いた。 『好き』 その言葉が私の体に染み込んで、全身に回り、やがては頭の中で響きだす。 目蓋を閉じたとしても、陸の顔だけは消えることはなかった。 * * *