普段の陸は、クラブでバーテンダーとして働いていた。
スーツをビシッと着こなし、長い髪も1つにまとめて後ろに流している。
客層は幅広く、6割程が常連客だという。
女性客の数も多く、陸を目当てに通い詰めている人も、決して少なくないと私は勝手に思っていた。
「ねぇ…、陸ってモテるでしょ?」
「そうでもないよ」
陸は満更でもなさそうな顔で答えた。
自覚があるのは、その顔を見れば私にでもわかる。
「ずっと彼女いないし。てかさ、ななちゃん居れば俺はそれでいいから」
照れもせず、そんな言葉をさらりと言い放つのだ。