『彼を縛りたくはない』と言いながら。


それなのに、私は陸の体や心にジワジワと侵入し、心を乱し、理性を失わせる存在となってしまっていた。


「別にいいよ。私…陸になら」


少しだけ緩んだ腕を解いて、私は陸と向かい合った。
濡れたように潤んだ陸の瞳が、より私の胸を締め付ける。


「だって…きっと陸は、最後のその瞬間まで、私を愛してくれるでしょ?」


私はそう言って、微笑んでみせた。
この世でもっとも大切で、もっとも惨めで愚かな、愛しい人に向かって。





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