「……駄目?」
「駄目じゃないけど……」
「じゃあ決まり。約束ね!」
強引に約束を取り付けた私は、ズイッと誉くんの鼻先に小指を突きつけた。
「華恋ちゃんには負けたよ」
突きつけられた小指を見て困ったように苦笑した誉くんは、私の小指に自分の小指を絡ませるとそのまま自分の方へと引き寄せた。
「……っ」
小指が絡んだまま誉くんの胸元に飛び込んだ私を、誉くんの左腕が優しく抱き止めてくれる。
次の瞬間。
「──約束、こっちでもいい?」
鼓膜を振るわせたのは、甘い甘い囁き。
誉くんの言う“こっち”が何を指しているのかすぐに分かった私は、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じながらコクリと小さく頷いた。
「──約束、ね?」
その言葉と共に落ちてきたのは、誉くんの優しいキス。
マスク越しじゃない、リアルなキス。
ずっと、夢見てた。
誉くんと、キスすること。
リアルなそのキスは、前のキスなんか非じゃないぐらい熱くて。
「……っ」
頭がクラクラして溶けそうだった。