「ジュリア嬢!」
「うわっ!はい!」

 少し前のことを思い出していると、ギャレットがジュリアの肩を揺さぶっていた。視界が揺れて、まるで浮いているような感覚だった。

「人の話を聞いていた?」
「・・・・・・聞いていなかった」

 何の話をしていたのかわからず、何も聞いていなかったことだけ理解した。

「だから、せっかく学校の課題が終わったのだから、休みにどこかへ遊びに行くことを話していたんだよ」

 ジュリアが話を聞いていなかったので、二人は記憶を思い出したと思った。

「ジュリア、もしかして、何かを思い出したのか?」
「俺とジュリア嬢が仲良くいちゃついていたこととか?」
「違う!」

 ギャレットはすぐにジュリアを自分とくっつけようとする。

「ギャレットには言わない」
「ケネスには言うの?ずるいよ」
「とにかく内緒なの」

 自分のベッドへ逃げ込もうとすると、ギャレットが先回りしている。ギャレットもケネスも吸血鬼だから力もスピードもジュリアより上。

「いらっしゃい、ジュリア嬢」

 扉の前に立つギャレットを追い払うためにジュリアは枕を投げた。